「誰も遊んでくれなくて、いつも1人で遊んでいるんだ」
家に帰ってきた子どもに、こんな報告をされたら、
ドキッとするだろうし、心配もするだろう。
で、心配して幼稚園に問い合わせ、なんて事はよくある。
では、実際に本当に「誰も遊んでくれない」「いつも1人」なのか、
というと、そうでもないんだな、これが。
「遊んでくれない」「1人」のメカニズムの一部を紹介しよう。
それには、まず子ども同士のルールを説明しないと。
子ども同士のルール。
それは、遊ふ時は「いーれーて」と言わないとダメらしい。
「いーれーて」と言わないで入ってくると、
「あ!○○ちゃん、『いれて』って言ってな〜い!」とダメ出しが入る。
んでもって、「いれて」と言う側は
「いーいーよ」と言われないと、入っちゃダメだと思ってるんだな。
ここで生じるのが、発達の差による誤解。
例えば、「いれて」「いいよ」のやり取りに慣れていない子にとって、
自分が遊びに没頭している時に「いれて」と言われても
なんのこっちゃ分からない。
だから「いいよ」の返事はしない。
ところが、「いれて」と言った方にしてみれば
「いいよ」と言ってくれない=仲間に入れてくれない=誰も遊んでくれない
になっちゃうんだな。
別に相手の子は「遊んであげない」なんて思っちゃいなくて、
ただ単にそこまで気が回らないだけなんだけど、
「いれて」と言った方にしてみれば、入れてくれない、と傷付くわけよ。
まだ1人遊びの段階の子に「いれて」と声を掛けても、
やっぱり返事は返ってこないよね。
教師からしてみれば、
この子はまだ友達との関わりよりも1人で没頭する段階、だとか
この子は社交的で友達との関わりを楽しめる段階、だとか
子どもの成長度合いが分かるけど、
子どもにはそんなの知る由もなく、みんな「ともだち」なのだ。
だから、声を掛ける相手が悪いと(ちょっと言い方に語弊があるけど)
返事がなかったり相手にしてもらえなかったりして
「遊んでくれない」になるんだな。
また、一緒に遊んでいても、
友達と一緒に遊んでいる事を意識している子と、
そうでない子とでは行動が違ってくる。
「友達と一緒に遊んでいる事を意識している子」というのは、
例えば滑り台から砂場に移動する時に、
ちゃんと相手に「今度砂場に行こう!」と声を掛け、一緒に行こうとする。
ついてこなければ待っててあげられるし、
相手が先に行けば「待って〜」と追いかけても行ける。
ところが、「そうでない子」というのは、
滑り台をしていても『砂場で遊びたい』と思ったら、即実行。
1人でどんどん行ってしまうのだ。
相手に声も掛けないし、待っててもくれない。
砂場に行きたい、だから行く。
また「砂場に行こう」と声を掛けられても、
もしまだ滑り台で遊びたいと思っていたら、
相手が先に行こうが追いかけて行くなんてせず、滑り台に夢中だろうね。
まだ「一緒に遊んでいる」という意識よりも「遊びたい」方が優先なんだよね。
だから
「友達と一緒というのを意識してる子」と「そうでない子」が一緒に遊ぶと
「意識してる子」にしてみれば、いきなり相手が消えている訳だから、
1人にさせられるわけだし、その意識も大きい。
だから、「いつも1人」になっちゃうわけよ。
これは、自分よりもまだ成長がのんびりな子と遊んでいる時に
よく起こる現象。
そうでない場合もある。
同じような成長過程にある子同士だと、また違ってくる。
A「入れてー」
B「今日はCちゃんと一緒に遊ぶから、遊べな〜い」
よく聞く会話だ。
BちゃんとCちゃんの中にAちゃんを入れてあげれば済む話なのに、
何故か『Cちゃんと遊ぶ』の概念の中に『Aちゃんも入れる』は存在しない。
決してBちゃんに悪気はなく、
ただ『Aちゃんも入れる』という発想がないだけなんだよね。
まだそこまで頭が柔らかくないとでもいうのかな。
でもAちゃんにしてみれば「入れてくれない」「遊んでくれない」になり、
悲しくなってしまうのよね。
そういう時は、教師が間に入って・・・
先生「Aちゃんも一緒に入れてあげたら?」
B「だって、今日はCちゃんと遊びたいんだもん」
先生「BちゃんはCちゃんと遊びたいの?」
B「そうだよ」
先生「でもAちゃんはBちゃんと遊びたいって思ってるんだよ」
B「でもCちゃんと遊びたいんだもん」
先生「3人で遊べば、BちゃんもCちゃんと一緒に遊べるし、
AちゃんもBちゃんと一緒に遊べるよ。3人で遊べば?」
B「うーん・・・」
先生「Aちゃん、もう1回『いれて』って言ってごらん。
Bちゃんは優しいからきっと『いいよ』って言ってくれるよ」
A「いーれーて」
B「いーいーよ」
な〜んて事もよくある会話だ☆
実に単純な説得だけど、こういう発想を植えつけてあげることによって
『2人だけでなく複数で遊ぶ』という選択肢が
子どもの中に入っていくんだよねー。
中には、
それでも「2人だけで遊びたい!」と頑固にも入れてくれない子もいる。
でも、だからといってその子が意地悪というわけでもなく、
本当にそういう気分の時だってあるでしょ?
だから、
「そっか〜。じゃぁ、後でならAちゃんも入れてあげてくれる?」
と話すと、大抵「いいよ」となる。
で、
「じゃぁ、今は先生と一緒に遊ぼうか!」と
今現在Bちゃんと遊ぶことができないAちゃんを誘う。
『先生と2人』という響きは、そういう状況下の子にとって効果的。
「うん!」と明るくなってくれる。
でも実際に先生と2人で遊ぶかというとそうではなく、
そういう時の先生が取る行動は、
『先生と2人』という『友達がいない』状況を作ろうとせず、
他の子を誘って一緒に遊び、Aちゃんの友達の輪を広げようとするね。
Bちゃんだけにこだわらず、他の友達にも目を向けさせ、
「Bちゃんと遊べなくて寂しかった」ではなく
「他の子と遊べて友達ができた」となれるようにするんだな。
そういえば、
「○○ちゃんとは遊びたくない。△△ちゃんも嫌い」
と自分から友達を拒否して、
「誰も私と遊んでくれないの」
という子もいた。
さすがの私もそれにはムッとして、
「誰も遊んでくれないんじゃなくて、自分から嫌がってるんでしょ!
そんな事ばっかり言ってたら、本当に友達いなくなるよ!」
と喝を入れさせて頂いた。
こういう子の「誰も遊んでくれない」も親は本気で心配するからね。
気が合わない時もあれば、自分の思い通りにならない事もあるけど、
それで友達を遠ざけていたら、友達はいなくなっちゃうもん。
こういう子には、こういう話をするのも時として必要。
色んなパターンがあるけど、
先生もちゃんと色々と仲介だのフォローだのしてるんですよ☆
(って、当たり前か)
こういう場合だけでなく、もちろん、
本当に「誰も遊んでくれない」とか「いつも1人」という子がいたら
担任が放っておくわけもなく、ちゃんと援助していますから(^^)
「誰も遊んでくれないの」「いつも1人なの」
こんな事を暗い表情で言われられなんかしたら、
気が気じゃないだろうけど、
先生はちゃんとフォローしています!